
法定相続情報一覧図に元配偶者は記載する?離婚がある場合の相続関係説明図との違いを司法書士が解説
相続手続きでは、亡くなった方の相続人が誰であるかを明らかにするために、戸籍を集め、相続関係を整理します。
その際によく使われる資料として、「法定相続情報一覧図」と「相続関係説明図」があります。
どちらも、亡くなった方と相続人との関係を図にして整理するものです。そのため、同じような書類だと思われることがあります。
しかし、実務上はこの2つの書類には大きな違いがあります。
特に、被相続人が離婚している場合、つまり元配偶者がいる場合には、この違いがはっきり表れます。
結論からいうと、法定相続情報一覧図には、離婚した元配偶者は原則として記載しません。
一方、相続関係説明図では、元配偶者を記載することがあります。
なぜ、同じ相続関係を説明するように見える書類なのに、記載内容が違うのでしょうか。
この記事では、法定相続情報一覧図と相続関係説明図の違い、離婚した元配偶者をどのように扱うべきか、前婚の子がいる場合の注意点について、司法書士の視点から分かりやすく解説します。
法定相続情報一覧図とは
法定相続情報一覧図とは、被相続人、つまり亡くなった方について、戸籍の記載から判明する法定相続人を一覧にした図です。
相続手続きでは、金融機関、法務局、証券会社、税務署などに対して、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍や、相続人の戸籍を提出する場面があります。
しかし、相続手続きのたびに大量の戸籍一式を提出するのは、申請する側にも、確認する側にも負担があります。
そこで、戸籍一式を法務局に提出し、登記官が内容を確認したうえで、法定相続情報一覧図の写しを交付する制度が設けられました。
この制度を利用すると、各種相続手続きで、戸籍一式の代わりに法定相続情報一覧図の写しを提出できることがあります。
法定相続情報一覧図は、相続登記、預貯金の払戻し、相続税申告、年金関係の手続きなど、さまざまな場面で利用されています。
相続関係説明図とは
相続関係説明図とは、被相続人と相続人との関係を分かりやすく整理した図です。
相続登記の申請では、被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人の戸籍などを添付します。
このとき、相続関係説明図を添付することで、法務局に対して相続関係を分かりやすく示すことができます。
また、相続関係説明図は、戸籍の原本還付を受けるための資料として利用されることもあります。
相続関係説明図は、法定相続情報一覧図と違い、登記官が認証文を付して交付する証明書ではありません。
そのため、法定相続情報一覧図ほど形式が厳格に決まっているわけではなく、戸籍の流れや相続関係を説明するために、実務上必要な情報を記載することがあります。
この違いが、離婚した元配偶者の記載の有無に関係します。
一番大きな違いは「目的」です
法定相続情報一覧図と相続関係説明図は、似ているようで目的が違います。
法定相続情報一覧図の目的は、戸籍に基づいて、法定相続人が誰であるかを明らかにすることです。
つまり、「相続人を証明するための図」です。
一方、相続関係説明図の目的は、戸籍のつながりや相続関係を、登記申請の審査上分かりやすく説明することです。
つまり、「相続関係を説明するための図」です。
この違いは、非常に重要です。
法定相続情報一覧図は、法務局が制度として扱う証明用の図ですから、原則として法定相続人を中心に作成されます。
一方、相続関係説明図は、相続関係を説明するための図ですから、場合によっては相続人ではない人を補助的に記載することがあります。
その典型例が、離婚した元配偶者です。
離婚した元配偶者は相続人ではありません
まず、相続人の基本を確認します。
亡くなった方に法律上の配偶者がいる場合、その配偶者は常に相続人になります。
ここでいう配偶者とは、相続開始時、つまり亡くなった時点で法律上の婚姻関係にある配偶者です。
すでに離婚している元配偶者は、相続開始時には配偶者ではありません。
したがって、元配偶者は法定相続人ではありません。
たとえば、夫Aさんと妻Bさんが婚姻していたものの、その後離婚したとします。
離婚後、Aさんが亡くなった場合、BさんはAさんの元配偶者ですが、Aさんの相続人にはなりません。
これは、離婚の原因や婚姻期間の長さ、子の有無、財産形成への貢献などとは別の問題です。
離婚により法律上の配偶者ではなくなっているため、相続人にはならないのです。
法定相続情報一覧図には元配偶者を記載しません
法定相続情報一覧図は、戸籍に基づいて法定相続人を明らかにするための図です。
離婚した元配偶者は法定相続人ではありません。
したがって、法定相続情報一覧図には、原則として元配偶者を記載しません。
ここで誤解しやすいのは、「戸籍に元配偶者が出てくるのだから、一覧図にも書くのではないか」という点です。
たしかに、被相続人の出生から死亡までの戸籍を集めると、婚姻、離婚、再婚、子の出生などの記載が出てきます。
元配偶者の氏名が戸籍に記載されていることもあります。
しかし、法定相続情報一覧図は、戸籍に記載されている人をすべて書く図ではありません。
法定相続人を明らかにする図です。
そのため、戸籍に登場する人物であっても、相続人でなければ記載しないのが基本です。
元配偶者は、被相続人との婚姻歴を説明するうえでは重要な人物かもしれません。
しかし、法定相続人ではないため、法定相続情報一覧図の記載対象にはなりません。
前婚の子は記載します
ここで非常に重要なのが、元配偶者との間に子がいる場合です。
元配偶者は相続人ではありません。
しかし、元配偶者との間に生まれた子は、被相続人の子です。
被相続人の子は、第1順位の相続人になります。
したがって、前婚の子は法定相続情報一覧図に記載します。
たとえば、被相続人Aさんが、前妻Bさんとの間に子Cさんをもうけ、その後Bさんと離婚し、後にDさんと再婚したとします。
Aさんが亡くなった時点でDさんと婚姻中であれば、Dさんは配偶者として相続人になります。
また、前妻Bさんとの間の子Cさんも、Aさんの子として相続人になります。
一方、前妻Bさんは相続人ではありません。
この場合、法定相続情報一覧図には、被相続人Aさん、現在の配偶者Dさん、前婚の子Cさんを記載します。
前妻Bさんは記載しません。
この整理が、実務上とても重要です。
親権の有無は相続権に影響しません
前婚の子について、もう一つ誤解されやすい点があります。
それは、離婚後の親権です。
離婚の際、子の親権者が元配偶者になっていたとしても、その子が被相続人の子であることに変わりはありません。
親権者でなかったからといって、親子関係がなくなるわけではありません。
したがって、被相続人の前婚の子は、親権の有無にかかわらず、被相続人の相続人になります。
また、長年交流がなかった、養育費の支払いがなかった、戸籍を見て初めて存在を知った、というような事情があっても、法律上の親子関係がある限り、相続人となります。
法定相続情報一覧図を作成する際には、被相続人の戸籍を出生までさかのぼって確認し、前婚の子、認知した子、養子などがいないかを慎重に確認する必要があります。
相続関係説明図では元配偶者を記載することがあります
一方、相続関係説明図では、離婚した元配偶者を記載することがあります。
これは、元配偶者を相続人として扱うためではありません。
前婚の子が、どの婚姻関係から生まれた子であるかを分かりやすく説明するためです。
たとえば、被相続人に現在の配偶者との子と、前婚の子がいる場合、相続関係説明図に元配偶者を記載すると、家族関係の流れが分かりやすくなります。
この場合、元配偶者の横に「離婚」「元妻」「元夫」「相続人でない」などと記載し、法定相続人ではないことを明確にします。
相続関係説明図は、相続関係を説明するための図です。
したがって、前婚の子の位置づけを明らかにするために、元配偶者を補助的に記載することがあります。
ここが、法定相続情報一覧図との大きな違いです。
具体例で見る記載の違い
次のような家族関係を考えてみます。
被相続人 A
元配偶者 B(Aと離婚済み)
AとBの子 C
現在の配偶者 D
AとDの子 E
Aさんが亡くなった場合、相続人は、現在の配偶者Dさん、前婚の子Cさん、現在の配偶者との子Eさんです。
元配偶者Bさんは相続人ではありません。
この場合、法定相続情報一覧図には、次の人物を記載します。
元配偶者Bさんは記載しません。
一方、相続関係説明図では、次のように記載することがあります。
このように、相続関係説明図では、元配偶者Bさんを記載することで、Cさんが前婚の子であることを図として説明できます。
ただし、Bさんが相続人であるかのように見えないよう、「離婚」「元配偶者」「相続人でない」などの注記を入れることが重要です。
法定相続情報一覧図は「説明しすぎない」ことが大切です
法定相続情報一覧図を作成するときに大切なのは、説明しすぎないことです。
相続関係を分かりやすくしようとして、元配偶者、相続人でない親族、離婚歴、婚姻歴、細かい事情まで記載したくなることがあります。
しかし、法定相続情報一覧図は、戸籍の記載に基づいて法定相続人を明らかにするための制度上の図です。
そのため、相続人でない人を記載すると、かえって一覧図として不適切になる可能性があります。
法定相続情報一覧図では、被相続人と法定相続人を過不足なく記載することが基本です。
元配偶者を記載したい場合でも、それは相続関係説明図の役割として考えるべきです。
相続関係説明図は「分かるように書く」ことが大切です
一方、相続関係説明図では、戸籍の流れや相続関係が分かるように記載することが重要です。
相続関係説明図は、法定相続情報一覧図のように、登記官が認証文を付して交付する証明書ではありません。
そのため、実務上、相続関係を説明するために必要な範囲で、元配偶者や死亡した子、代襲相続の関係、相続放棄者などを記載することがあります。
たとえば、前婚の子がいる場合、元配偶者をまったく記載しないと、図だけを見たときに、子の関係が分かりにくくなることがあります。
そのような場合には、元配偶者を記載したうえで、「離婚」「相続人でない」と明記することで、相続関係を分かりやすく整理できます。
ただし、相続関係説明図でも、不要な人物を過度に記載すると、かえって分かりにくくなります。
大切なのは、法務局や金融機関、相続人が見たときに、相続人の範囲が誤解なく理解できることです。
相続放棄との違いにも注意
元配偶者の話とあわせて、相続放棄との違いにも注意が必要です。
相続放棄をした人は、家庭裁判所で相続放棄が受理されると、法律上は初めから相続人でなかったものと扱われます。
しかし、法定相続情報一覧図では、戸籍の記載に基づく法定相続人を明らかにする制度であるため、相続放棄をした人についても記載されることがあります。
相続放棄は、戸籍に当然に記載されるものではありません。
そのため、法定相続情報一覧図だけを見ても、誰が相続放棄をしたかまでは分かりません。
一方、元配偶者は、そもそも法定相続人ではありません。
この点が、相続放棄者との違いです。
つまり、相続放棄者は「戸籍上は法定相続人として現れるが、別の手続により相続しない人」です。
元配偶者は「離婚により配偶者ではなくなっており、そもそも相続人ではない人」です。
この違いを混同しないことが大切です。
再婚している場合の注意点
被相続人が再婚している場合には、現在の配偶者と前婚の子が共同相続人になることがあります。
この場合、相続手続きでは、現在の配偶者と前婚の子との間で遺産分割協議が必要になることがあります。
相続人同士が面識を持っていないことも少なくありません。
現在の家族が、前婚の子の存在を知らなかったということもあります。
しかし、戸籍を確認すれば、前婚の子がいるかどうかは判明します。
前婚の子がいる場合、その子を除いて遺産分割協議をしても、有効な遺産分割協議にはなりません。
相続登記でも、前婚の子を含めた相続人全員の関与が必要になります。
このような場面では、法定相続情報一覧図と相続関係説明図を正しく使い分けることが重要です。
元配偶者との間に子がいない場合
被相続人に離婚歴があっても、元配偶者との間に子がいない場合があります。
この場合、元配偶者は相続人ではなく、前婚の子もいません。
そのため、法定相続情報一覧図には元配偶者を記載しません。
また、相続関係説明図においても、元配偶者を記載する必要性は低くなります。
ただし、戸籍上、婚姻と離婚の記載が出てくるため、相続人調査の過程では当然確認します。
しかし、確認したことと、図に記載することは別です。
法定相続情報一覧図は、戸籍上確認したすべての婚姻歴を記載するものではありません。
内縁の配偶者との違い
元配偶者と似た誤解が起きやすいものに、内縁の配偶者があります。
長年一緒に生活していたとしても、法律上の婚姻届を出していない内縁の配偶者は、原則として法定相続人にはなりません。
したがって、内縁の配偶者も、法定相続情報一覧図には記載しません。
もっとも、内縁の配偶者については、遺言、特別縁故者、財産分与的な清算、賃貸借や年金など、別の法律問題が関係することがあります。
しかし、法定相続情報一覧図の記載という観点では、相続開始時の法律上の配偶者かどうかが重要です。
法定相続情報一覧図を使う場面
法定相続情報一覧図は、相続手続きを効率化するために非常に便利です。
たとえば、次のような手続きで利用されます。
ただし、提出先によっては、法定相続情報一覧図だけでなく、戸籍、遺産分割協議書、印鑑証明書、相続放棄申述受理証明書などを追加で求められることがあります。
特に、前婚の子がいる場合、相続人間の関係が複雑になりやすいため、提出先ごとの確認が必要です。
相続関係説明図を使う場面
相続関係説明図は、主に相続登記の場面で利用されます。
相続登記では、戸籍一式を添付して相続関係を証明します。
その際に、相続関係説明図を添付すると、戸籍のつながりや相続人の範囲を分かりやすく整理できます。
また、相続関係説明図を添付することで、戸籍の原本還付を受ける実務上の資料として利用されることがあります。
相続関係説明図は、法定相続情報一覧図と違って、すべての相続手続きで戸籍の代わりになるものではありません。
あくまで、相続登記などの手続きにおいて、相続関係を説明するための資料です。
そのため、元配偶者の記載についても、制度上の証明書である法定相続情報一覧図とは扱いが異なります。
実務で間違いやすいポイント
離婚がある相続では、次のような間違いが起きやすくなります。
元配偶者は法定相続人ではありません。戸籍に記載があっても、法定相続情報一覧図には原則として記載しません。
元配偶者は相続人ではありませんが、前婚の子は被相続人の子として相続人になります。親権や交流の有無とは関係ありません。
前婚の子がいる場合、その子も遺産分割協議の当事者になります。相続人全員の関与が必要です。
相続関係説明図に元配偶者を記載する場合は、「離婚」「元配偶者」「相続人でない」などと明記し、誤解を避ける必要があります。
両者は目的が違います。法定相続情報一覧図は相続人を証明する図、相続関係説明図は相続関係を説明する図です。
作成時のおすすめの考え方
実務上は、まず戸籍を正確に読み解くことが大前提です。
被相続人の出生から死亡までの戸籍を確認し、婚姻、離婚、再婚、子の出生、認知、養子縁組、離縁などを確認します。
そのうえで、誰が法定相続人になるのかを確定します。
法定相続情報一覧図を作るときは、相続人ではない人を入れず、被相続人と法定相続人を正確に記載します。
相続関係説明図を作るときは、相続関係を説明するために必要な範囲で、元配偶者や死亡した親族などを補助的に記載するかを判断します。
このように、同じ戸籍をもとにしていても、作る書類の目的によって記載内容を変える必要があります。
司法書士に相談するメリット
離婚歴や再婚歴がある相続では、相続人の確定が複雑になることがあります。
特に、前婚の子がいる場合、被相続人の戸籍を丁寧に読み解かなければ、相続人を見落とすおそれがあります。
相続人を一人でも漏らして遺産分割協議をしてしまうと、その協議は有効なものとはいえません。
また、法定相続情報一覧図と相続関係説明図の違いを理解せずに作成すると、法務局で補正になる可能性もあります。
司法書士は、戸籍の読み取り、相続人の確定、法定相続情報一覧図の作成、相続関係説明図の作成、相続登記申請までを一体的に確認できます。
離婚、再婚、前婚の子、養子縁組、代襲相続、相続放棄などが関係する場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
まとめ
法定相続情報一覧図と相続関係説明図は、どちらも相続関係を整理するために使われる図です。
しかし、目的が違います。
法定相続情報一覧図は、法定相続人を証明するための図です。
相続関係説明図は、戸籍の流れや相続関係を説明するための図です。
離婚した元配偶者は、法定相続人ではありません。
そのため、法定相続情報一覧図には、原則として元配偶者を記載しません。
一方、相続関係説明図では、前婚の子との関係を分かりやすくするために、元配偶者を記載することがあります。
ただし、その場合でも、元配偶者が相続人であるかのように見えないよう、「離婚」「元配偶者」「相続人でない」などの注記を入れることが重要です。
元配偶者は相続人ではありませんが、元配偶者との間の子は、被相続人の子として相続人になります。
親権の有無、交流の有無、現在の家族関係とは関係なく、法律上の親子関係があれば相続人になります。
離婚や再婚がある相続では、法定相続情報一覧図と相続関係説明図を正しく使い分けることが大切です。
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