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相続した不動産の場所によっては別の申請や届出が必要?森林法・農地法などの注意点を司法書士が解説

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相続した不動産の場所によっては別の申請や届出が必要?森林法・農地法などの注意点を司法書士が解説

相続した不動産の場所によっては別の申請や届出が必要?森林法・農地法などの注意点を司法書士が解説

 相続で不動産を取得した場合、多くの方がまず思い浮かべるのは「相続登記」だと思います。

 亡くなった方の名義になっている土地や建物を、相続人の名義に変更する手続きです。

 令和6年4月1日から相続登記が義務化されたこともあり、不動産を相続したら相続登記をしなければならない、という意識は少しずつ広がっています。

 しかし、相続した不動産について必要になる手続きは、相続登記だけとは限りません。

 その土地がどこにあるのか、どのような場所なのか、農地なのか、山林なのか、市街化調整区域なのか、道路や私道に関係する土地なのか、建物が建っているのか、傾斜地なのかによって、別の届出や許可、確認が必要になることがあります。

 たとえば、相続した土地が森林であれば、森林法に基づく届出が必要になる場合があります。

 相続した土地が農地であれば、農地法に基づく届出が必要になる場合があります。

 また、その農地を売る、貸す、宅地や駐車場にするという場合には、別途農地法上の許可が必要になることがあります。

 さらに、市街化調整区域、盛土規制区域、土砂災害警戒区域、保安林、文化財に関係する区域など、土地の場所によっては、利用や処分の前に確認すべき制度があります。

 つまり、相続した不動産は、単に「登記名義を変える」だけで終わるものではありません。

 まず、その不動産がどこにあるのかを確認し、その場所にどのような規制や届出が関係するのかを把握することが大切です。

 この記事では、相続した不動産の場所によって必要になる可能性がある申請や届出、森林法、農地法、相続土地国庫帰属制度、都市計画上の注意点などについて、司法書士の視点から解説します。

相続登記だけで終わらない不動産があります

 相続登記は、不動産の名義を亡くなった方から相続人へ変更する手続きです。

 相続人を確定し、遺言や遺産分割協議の内容に応じて、土地や建物の登記名義を変更します。

 不動産の相続手続きでは、この相続登記が中心になります。

 ただし、相続登記は、不動産登記簿上の所有者を変更する手続きです。

 その土地が農地なのか、森林なのか、どの区域にあるのか、今後どのように利用できるのかをすべて判断する手続きではありません。

 たとえば、登記簿上の地目が「山林」である土地を相続した場合でも、その土地が森林法上の届出対象になるかどうかは、地域森林計画の対象森林に該当するかなどを確認する必要があります。

 また、登記簿上の地目が「田」や「畑」である場合には、農地法上の届出や許可の検討が必要になります。

 さらに、登記簿上は「宅地」となっていても、市街化調整区域や盛土規制区域にある場合、建築や造成、売却、活用の際に別の確認が必要になることがあります。

 相続登記は重要です。

 しかし、相続した不動産を本当に管理し、活用し、処分していくためには、登記だけでなく、その土地の場所と性質を確認する必要があります。

土地の場所によって手続きが変わる理由

 土地は、どこにあるかによって法律上の扱いが変わります。

 同じ「土地」であっても、市街地の宅地、農村部の田畑、山間部の山林、道路の一部、急傾斜地、海岸沿いの土地、文化財の近くの土地では、確認すべき内容が異なります。

 不動産登記簿には、所在、地番、地目、地積、所有者などが記載されています。

 しかし、登記簿だけを見ても、その土地がどのような区域にあるのか、現況がどうなっているのか、農地法や森林法などの届出対象になるのかまでは分からないことがあります。

 固定資産税の通知書や名寄帳にも、土地の情報は記載されています。

 ただし、それも基本的には文字情報です。

 相続人が実際の場所を把握していなければ、「この土地はどう扱えばよいのか」という判断ができません。

 相続した不動産については、まず地番をもとに場所を確認し、その土地がどのような地域にあるのかを把握することが第一歩になります。

森林を相続した場合の注意点

 相続した土地が森林である場合、森林法に基づく届出が必要になることがあります。

 森林の土地の所有者届出制度では、売買や相続などにより森林の土地を新たに取得した人は、面積にかかわらず届出が必要とされています。

 届出先は、取得した土地がある市町村の長です。

 届出期間は、土地の所有者となった日から90日以内とされています。

 ここで注意したいのは、登記上の地目だけで判断しないという点です。

 登記簿上の地目が「山林」であれば分かりやすいですが、実際には、登記上の地目が山林でなくても、取得した土地が森林の状態になっている場合には、届出対象となる可能性があります。

 また、届出の対象となるのは、都道府県が策定する地域森林計画の対象となっている森林です。

 そのため、相続した土地が森林法上の届出対象かどうかは、土地の所在する市区町村や都道府県の林務担当部局に確認する必要があります。

 森林の土地の所有者届出は、不動産登記とは別の制度です。

 相続登記をしたから森林法の届出が不要になる、というものではありません。

 相続登記をしていなくても、森林の土地を取得した場合には届出が必要になることがあります。

 山林を相続したときは、「登記名義をどうするか」だけでなく、「森林法上の届出が必要か」を確認することが大切です。

農地を相続した場合の注意点

 相続した土地が農地である場合、農地法に基づく届出が必要になることがあります。

 農地を相続したときは、その農地が所在する農業委員会に届出をする必要があります。

 相続による農地の取得は、売買のように農地法第3条の許可を受けて取得する場面とは異なります。

 しかし、相続によって農地の権利を取得した場合でも、農業委員会への届出が必要になります。

 農地を相続したときに大切なのは、その後どう使うかです。

 相続人自身がその農地で農業を行う場合、通常、そのこと自体について特別な手続きが不要とされる場面もあります。

 しかし、水路や土地改良区、地域の共同管理、賦課金など、地元のルールや負担が関係する場合があります。

 また、農地を売る、貸すという場合には、原則として農業委員会の許可が必要になります。

 さらに、農地を住宅用地、駐車場、資材置場など、耕作以外の用途に変える場合には、農地転用の手続きが必要になることがあります。

 自分が相続した土地だからといって、農地を自由に宅地や駐車場にできるわけではありません。

 農地は、場所と区域によって扱いが大きく変わります。

 市街化区域内の農地なのか、市街化調整区域内の農地なのか、農用地区域内の農地なのかによって、売却、転用、活用の難易度が変わります。

 農地を相続した場合は、まず場所を確認し、その農地がどの農業委員会の管轄にあるのかを把握することが重要です。

市街化調整区域にある土地は特に注意が必要です

 相続した土地が市街化調整区域にある場合も注意が必要です。

 市街化調整区域とは、市街化を抑制する区域です。

 そのため、住宅を建てる、店舗を建てる、造成する、開発するという場合に、都市計画法上の制限が問題になることがあります。

 相続人が「土地を相続したのだから、将来自分の家を建てられるだろう」と考えていても、実際には建築が難しい土地であることがあります。

 また、不動産会社に売却を相談したときに、市街化調整区域であることを理由に、利用方法や買主が限られることもあります。

 市街化調整区域の土地は、登記簿や固定資産税通知書だけでは判断しにくいことがあります。

 地図上で場所を確認し、都市計画情報や自治体の窓口で区域を確認することが大切です。

盛土規制区域や急傾斜地にある土地

 山林や斜面地、造成された土地を相続した場合には、盛土規制法や土砂災害に関する区域指定にも注意が必要です。

 盛土規制法では、農地や森林の造成、土石の一時的な堆積なども含め、規制区域内で行う盛土等が許可の対象となる場合があります。

 相続した土地を整地したい、駐車場にしたい、資材置場にしたい、太陽光発電設備を設置したい、残土を置きたいという場合には、その土地が規制区域内にあるかどうかを確認する必要があります。

 また、土砂災害警戒区域や急傾斜地崩壊危険区域などに該当する場合、売却、建築、管理、保険、近隣対応などに影響することがあります。

 相続人が遠方に住んでいる場合、現地の傾斜や災害リスクを把握できていないことがあります。

 このような土地は、単に名義を変えるだけでなく、現地状況を確認することが重要です。

道路・私道・通路に関係する土地

 相続した土地の中には、道路や私道、通路に関係するものがあります。

 たとえば、自宅の敷地とは別に、私道持分や道路部分の土地を所有している場合があります。

 固定資産税の通知書に小さな土地が載っているけれど、何の土地か分からないという相談では、実は私道や通路部分だったということがあります。

 このような土地は、単独で売却する土地ではなく、自宅や隣地、分譲地全体の通行に関係している可能性があります。

 また、建築基準法上の道路に接しているかどうかは、建物の建築や再建築に大きく影響します。

 相続した土地が道路に接しているのか、接道していないのか、私道持分があるのか、他人の通行に使われているのかは、場所を確認しなければ判断しにくい問題です。

 特に、古い分譲地や親族間で分けた土地、地方の集落内の土地では、地番だけを見ても道路との関係が分かりにくいことがあります。

建物がある土地・空き家がある土地

 相続した土地に建物がある場合には、建物の登記、固定資産税、空き家管理、解体、売却などの問題が出てきます。

 登記簿上は土地だけが見つかっていても、現地には古い建物が残っていることがあります。

 反対に、固定資産税の通知書に建物が載っているのに、建物登記がない、未登記建物であるということもあります。

 空き家がある場合には、建物の老朽化、倒壊、近隣への影響、防犯、草木の繁茂、解体費用などを考える必要があります。

 また、空き家を売却する場合、土地と建物の名義、建物の登記の有無、相続人全員の合意、境界、接道などを確認することになります。

 土地の場所を確認することは、建物の有無や現地管理の必要性を把握するきっかけにもなります。

相続土地国庫帰属制度を考える場合

 相続した土地について、「使う予定がない」「管理できない」「売却も難しい」という場合には、相続土地国庫帰属制度を検討することがあります。

 相続土地国庫帰属制度は、相続等によって土地の所有権又は共有持分を取得した人が、一定の要件のもとで、土地を国庫に帰属させることについて承認を申請できる制度です。

 ただし、国がどのような土地でも無条件で引き取ってくれる制度ではありません。

 建物がある土地、担保権や使用収益権が設定されている土地、境界が明らかでない土地、管理や処分に過分な費用や労力がかかる土地などは、申請や承認の段階で問題になることがあります。

 また、審査手数料や負担金も関係します。

 農地や山林の場合には、さらに現況や管理状況、区域指定、土地改良区の関係なども確認が必要になることがあります。

 相続土地国庫帰属制度を検討する場合でも、最初に必要なのは、その土地がどこにあるのか、どのような状態なのかを把握することです。

 場所が分からない土地について、国庫帰属制度の利用可否を判断することはできません。

相続人が見落としやすい土地

 相続手続きでは、相続人が存在を見落としやすい土地があります。

 代表的なのは、遠方の山林、農地、私道持分、共有地、墓地周辺の土地、古い分譲地の一部、道路のように使われている土地、地積の小さい土地です。

 固定資産税の評価額が低い土地や、非課税に近い土地は、家族の記憶から抜け落ちやすいことがあります。

 また、被相続人が昔購入した土地、親族から受け継いだ土地、共有持分だけを持っている土地などは、相続人が現地を知らないまま相続することがあります。

 このような土地は、相続登記の対象になるだけでなく、場所によっては、森林法や農地法などの届出対象になる可能性があります。

 まずは、固定資産税通知書、課税明細書、名寄帳、登記事項証明書などを確認し、そこに書かれている地番を手がかりに土地の場所を確認することが大切です。

手続きの優先順位をどう考えるか

 相続した不動産に関係する手続きが複数ある場合、何から始めればよいのでしょうか。

 まず必要なのは、不動産の一覧を作ることです。

 固定資産税通知書や名寄帳をもとに、土地や建物を一覧化します。

 次に、それぞれの不動産について、所在地、地番、地目、地積、固定資産税評価額を確認します。

 そのうえで、土地の場所を地図上で確認します。

 場所が分かれば、農地なのか、山林なのか、市街地なのか、道路に接しているのか、建物があるのか、管理が必要なのかが見えてきます。

 その後、相続登記、農地法の届出、森林法の届出、売却や活用の検討、国庫帰属制度の検討など、必要な手続きを整理します。

 相続登記には期限があります。

 森林の土地の所有者届出にも期間があります。

 農地を相続した場合の届出にも期限があります。

 そのため、相続した不動産が複数ある場合には、早い段階で一覧化し、場所を確認し、必要な手続きを洗い出すことが重要です。

司法書士に相談するメリット

 司法書士は、不動産の相続登記、相続人調査、法定相続情報一覧図の作成、遺産分割協議書の作成支援を行う専門家です。

 相続した不動産について、誰が相続人なのか、誰が不動産を取得するのか、相続登記にどの書類が必要なのかを整理できます。

 ただし、農地法や森林法、都市計画法、盛土規制法などが関係する場合には、司法書士だけで完結しない手続きもあります。

 農地であれば農業委員会、森林であれば市区町村や都道府県の林務担当部局、開発や建築であれば自治体の都市計画・建築担当部署、境界や測量であれば土地家屋調査士、不動産の売却であれば不動産会社など、必要に応じて関係先と連携することが大切です。

 司法書士に相談するメリットは、相続登記を起点に、不動産の名義、相続人、遺産分割、必要書類を整理し、その土地の場所や性質に応じて次に確認すべき窓口を整理できることです。

 特に、相続した不動産が複数ある場合、遠方の土地がある場合、農地や山林が含まれる場合、相続人が土地の場所を知らない場合には、最初の整理がとても重要になります。

まとめ

 相続した不動産について必要になる手続きは、相続登記だけとは限りません。

 土地の場所によっては、森林法に基づく届出、農地法に基づく届出、農地の売買・貸借・転用の許可、都市計画法上の確認、盛土規制法上の確認、相続土地国庫帰属制度の検討などが必要になることがあります。

 これらは、登記簿だけを見ても判断できないことがあります。

 固定資産税通知書や名寄帳に地番が書かれていても、その土地が実際にどこにあるのか分からなければ、農地なのか、山林なのか、市街化調整区域なのか、道路に関係する土地なのか、管理が必要な土地なのかを判断できません。

 相続した不動産の手続きで大切なのは、まず全体像を把握することです。

 どの不動産を相続したのか。

 その不動産はどこにあるのか。

 どのような土地なのか。

 相続登記以外に必要な届出や確認があるのか。

 これらを整理することで、相続人として次に何をすべきかが見えてきます。

 相続が発生したら、まずは固定資産税通知書、課税明細書、名寄帳、登記情報などを確認しましょう。

 そして、そこに記載された地番をもとに、土地の場所を確認しましょう。

 場所が分かれば、相続登記だけでよいのか、農地法や森林法の届出が必要なのか、売却や管理を検討すべきなのか、相続土地国庫帰属制度を検討できるのかが見えてきます。

 司法書士法人JOネットワークでは、不動産の相続登記、相続人調査、法定相続情報一覧図の作成、遺産分割協議書の確認など、相続した不動産に関するご相談を承っています。

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関連情報

法務省「相続登記の申請義務化について」

林野庁「森林の土地の所有者届出制度」

農林水産省「農地相続ポータル」

法務省「相続土地国庫帰属制度について」

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