
外国籍の売主様がいる不動産取引で注意したい「外国人登録原票」|決済日を決める前に確認したいこと
不動産売買の決済では、売主様から買主様へ所有権を移転し、代金の支払い、融資実行、抵当権設定登記、各種精算などを同日に行います。
そのため、決済日までに登記申請に必要な書類がそろっていることが非常に重要です。
通常の不動産取引では、売主様の本人確認書類、印鑑証明書、登記識別情報又は権利証、固定資産評価証明書などを確認しながら、司法書士が登記申請の準備を進めます。
しかし、売主様又は登記名義人が外国籍の方である場合には、一般的な日本国籍の方の売買とは異なる確認が必要になることがあります。
特に注意したいのが、登記簿上の住所と現在の住所が一致していないケースです。
所有権移転登記をする前提として、登記簿上の住所から現在の住所までのつながりを証明するため、住所変更登記が必要になる場合があります。
日本国籍の方であれば、住民票、戸籍の附票、住民票の除票などで住所の変遷を証明できることが多いです。
ところが、外国籍の方の場合、平成24年7月9日の制度改正前の住所履歴について、現在の住民票だけでは確認できないことがあります。
その場合、過去の住所を証明する資料として「外国人登録原票」が必要になることがあります。
この外国人登録原票は、市区町村の窓口ですぐに取得できるものではありません。
現在は、出入国在留管理庁に対して開示請求を行う必要があり、開示まで一定の期間を要します。
一般的には、開示決定まで30日程度を要するものとして、余裕を持って準備する必要があります。
つまり、売買契約が成立し、すぐに決済日を決めた後で、司法書士が確認したところ「外国人登録原票が必要です」と分かると、決済日に書類が間に合わない可能性があります。
この記事では、不動産会社の皆様に向けて、外国籍の売主様がいる不動産取引において、外国人登録原票が必要になる可能性、決済前に確認すべきポイント、決済日を決める前に司法書士へ相談する重要性について、実務上の注意喚起としてやんわりとお伝えします。
外国人登録原票とは
外国人登録原票とは、平成24年7月9日に外国人登録制度が廃止される前に、市区町村で管理されていた外国籍の方に関する登録記録です。
外国人登録制度が廃止された後、外国籍の方についても住民基本台帳制度の対象となり、住民票が作成されるようになりました。
その一方で、平成24年7月9日より前の住所履歴については、現在の住民票にそのまますべて記載されるわけではありません。
過去の住所の変遷を確認する必要がある場合、外国人登録原票の開示請求が必要になることがあります。
外国人登録原票には、制度廃止前に登録されていた氏名、国籍、居住地などの情報や、変更登録がされていた場合の履歴が記載されていることがあります。
不動産登記の実務では、登記簿上の住所から現在の住所までをつなぐ資料として、この外国人登録原票が問題になることがあります。
特に、外国籍の方が平成24年7月9日以前に不動産を取得しており、その後に住所を変更している場合には、注意が必要です。
なぜ不動産売買で外国人登録原票が必要になるのか
不動産の売買では、売主様が登記簿上の所有者本人であることを確認し、その方から買主様へ所有権を移転する登記を行います。
このとき、登記簿上の売主様の住所と、現在の印鑑証明書や本人確認書類上の住所が一致していない場合があります。
たとえば、登記簿上の住所が古い住所のままになっているケースです。
この場合、所有権移転登記の前提として、売主様の住所変更登記が必要になります。
住所変更登記では、登記簿上の住所から現在の住所まで、同一人物であることが分かるように住所のつながりを証明する必要があります。
日本国籍の方であれば、住民票や戸籍の附票などで住所のつながりを確認できることが多いです。
しかし、外国籍の方については、平成24年7月9日より前の住所履歴が現在の住民票だけでは確認できない場合があります。
そのような場合に、過去の居住地の履歴を確認するため、外国人登録原票の開示資料が必要になることがあります。
これは、売主様が外国籍であること自体が問題という意味ではありません。
問題になるのは、登記簿上の住所と現在の住所が異なり、その住所の変遷を証明する資料がすぐにはそろわない場合です。
平成24年7月9日以前から所有している不動産は注意が必要です
実務上、特に注意したいのは、外国籍の方が平成24年7月9日以前に不動産を取得しているケースです。
平成24年7月9日に外国人登録制度が廃止される前は、外国籍の方の住所情報は、現在の住民票制度とは異なる形で管理されていました。
そのため、平成24年7月9日以前に不動産を取得した外国籍の所有者について、登記簿上の住所が当時の住所のままになっている場合、現在の住所までのつながりを証明するために、外国人登録原票が必要になることがあります。
たとえば、次のようなケースです。
- 外国籍の売主様が平成24年7月9日以前に不動産を購入している
- 登記簿上の住所が古い住所のままになっている
- 現在の住民票では過去の住所履歴を十分に確認できない
- 登記簿上の住所から現在の住所までのつながりを証明する必要がある
- 住所変更登記をしたうえで所有権移転登記を行う必要がある
このような場合、決済直前に司法書士が書類を確認して初めて、外国人登録原票が必要であることが判明することがあります。
しかし、外国人登録原票は、その場ですぐに取得できる資料ではありません。
開示請求から開示まで一定の時間を要するため、決済日が近い場合には、予定どおりに決済を行えない可能性があります。
外国人登録原票はすぐに取得できる書類ではありません
不動産会社の皆様に特にご注意いただきたいのは、外国人登録原票が市区町村の窓口でその日に取得できる書類ではないという点です。
現在、外国人登録原票は出入国在留管理庁で保管されています。
必要な場合には、出入国在留管理庁に対して開示請求を行う必要があります。
開示請求をすると、法律上、原則として開示請求があった日から30日以内に開示決定がされることになっています。
ただし、これは「必ず数日で届く」という意味ではありません。
請求内容や混雑状況、本人確認、郵送手続きなどによって、実際に手元に資料が届くまでには相応の時間を見込む必要があります。
そのため、売買契約後に決済日を短い期間で設定している場合、外国人登録原票が必要になると、書類の到着が決済日に間に合わない可能性があります。
売主様、買主様、不動産会社、金融機関、司法書士の全員にとって、決済日が延期になることは大きな負担です。
だからこそ、外国籍の売主様が関係する取引では、契約後ではなく、できるだけ早い段階で住所変更登記の必要性を確認しておくことが大切です。
決済日を決めてからでは間に合わないことがあります
不動産売買では、売買契約の締結後、買主様の融資審査や残代金決済の準備に合わせて決済日を決めます。
通常であれば、必要書類を案内し、決済日までに売主様から書類をそろえていただく流れになります。
しかし、外国籍の売主様で、登記簿上の住所と現在の住所が異なる場合には、通常より早めの確認が必要です。
なぜなら、住所変更登記に必要な資料が、すぐに取得できるとは限らないからです。
特に、平成24年7月9日以前の住所履歴が関係する場合、外国人登録原票の開示請求が必要になる可能性があります。
その場合、決済日を先に決めてしまうと、後から書類が間に合わないことが分かることがあります。
決済直前に「外国人登録原票が必要です」と判明した場合、売主様にも、買主様にも、不動産会社にも、金融機関にも影響が出ます。
買主様は引越しや融資実行の予定を組んでいるかもしれません。
売主様は残代金を受け取る予定を立てているかもしれません。
金融機関は融資実行日の準備を進めているかもしれません。
不動産会社は引渡しや鍵の受け渡し、各種精算の段取りを組んでいるかもしれません。
それらが、住所変更登記に必要な資料不足によって延期になることがあります。
これは、誰かが悪いという話ではありません。
制度上、必要な資料の取得に時間がかかる場合があるということです。
だからこそ、早めに確認しておくことが大切です。
不動産会社様にお願いしたい確認事項
不動産会社様には、外国籍の売主様が関係する取引について、できるだけ早い段階で次の点を確認していただくことをおすすめします。
1 売主様が外国籍の方かどうか
まず、売主様が外国籍の方であるかどうかを確認します。
外国籍の方であること自体に問題があるわけではありません。
ただし、住所変更登記の資料確認において、日本国籍の方と異なる準備が必要になることがあります。
2 登記簿上の住所と現在の住所が一致しているか
次に、登記簿上の住所と、現在の住所が一致しているかを確認します。
登記簿上の住所が現在の住所と異なる場合、所有権移転登記の前提として、住所変更登記が必要になる可能性があります。
住所が一致していれば大きな問題にならないこともありますが、住所が異なる場合には早めに司法書士へ確認することが重要です。
3 不動産を取得した時期
外国籍の売主様が、その不動産をいつ取得したのかも重要です。
平成24年7月9日以前に取得している場合、登記簿上の住所から現在の住所までをつなぐために、外国人登録原票が必要になることがあります。
取得時期は、登記事項証明書の所有権取得日を見ることで確認できます。
4 過去の住所履歴が住民票でつながるか
現在の住民票や住民票の除票で、登記簿上の住所から現在の住所までのつながりを確認できるかを検討します。
住民票だけでつながらない場合には、追加資料が必要になることがあります。
外国籍の方については、平成24年7月9日以前の住所履歴が外国人登録原票で確認されることがあるため、注意が必要です。
5 決済日を決める前に司法書士へ相談する
最も大切なのは、決済日を確定する前に司法書士へ確認することです。
必要書類の取得に時間がかかる場合、決済日程に影響します。
特に、売買契約から決済までの期間が短い案件では、早めの確認が欠かせません。
売主様が外国籍の方で、登記簿上の住所と現在の住所が異なる場合には、契約後すぐ、できれば契約前又は契約条件の調整段階で、司法書士に相談していただくことをおすすめします。
「住所が違うだけ」と軽く考えないことが大切です
不動産取引では、売主様の登記簿上の住所と現在の住所が異なることは珍しくありません。
そのため、「住所変更登記をすればよいだけ」と考えられることがあります。
確かに、日本国籍の方で、住民票や戸籍の附票で住所のつながりが確認できる場合には、比較的スムーズに進むことが多いです。
しかし、外国籍の方で、平成24年7月9日以前の住所履歴が関係する場合には、同じように考えると危険です。
外国人登録原票の開示請求が必要になると、資料取得に時間がかかります。
決済日が近い場合には、住所変更登記に必要な書類が間に合わない可能性があります。
所有権移転登記の前提となる住所変更登記ができないと、決済を安全に進めることが難しくなります。
そのため、外国籍の売主様については、「住所が違うだけ」と軽く見ず、早めに専門家へ確認することが大切です。
買主様や金融機関にも影響する可能性があります
外国人登録原票が必要になる問題は、売主様だけの問題ではありません。
決済日が延期になれば、買主様にも影響します。
引越し日、賃貸借契約の解約日、住宅ローンの実行日、火災保険の開始日、リフォームや工事の予定などが変わる可能性があります。
金融機関にも影響します。
融資実行日、金利条件、抵当権設定登記の予定、担保評価の有効期間などを再確認する必要が生じることがあります。
不動産会社にとっても、決済延期は大きな負担です。
売主様、買主様、金融機関、司法書士、管理会社、引越し業者など、多くの関係者の予定調整が必要になります。
だからこそ、外国籍の売主様がいる案件では、売買契約が成立してから慌てて確認するのではなく、できるだけ早い段階で、住所変更登記の可能性を確認しておくことが重要です。
司法書士が早めに確認できれば、対策を立てやすくなります
司法書士が早い段階で資料を確認できれば、必要な対策を立てやすくなります。
登記簿上の住所と現在の住所が一致しているか。
住所変更登記が必要か。
住民票や住民票の除票で住所のつながりが確認できるか。
外国人登録原票が必要になる可能性があるか。
開示請求を行う場合、決済日までに間に合うか。
これらを早めに確認できれば、決済日程を無理なく設定できます。
必要であれば、売主様に外国人登録原票の開示請求をご案内できます。
また、書類の取得見込みを踏まえて、売買契約書の決済期日や特約、関係者への説明を調整することもできます。
反対に、決済日が決まった後、あるいは決済直前に初めて資料不足が判明すると、対応の選択肢が限られます。
不動産取引の安全性を守るためには、司法書士が早めに関与できることがとても大切です。
不動産会社様に責任を求める話ではありません
ここでお伝えしたいのは、不動産会社様に過度な責任を求めるということではありません。
外国籍の売主様の住所変更登記において、外国人登録原票が必要になるかどうかは、個別の事情によって異なります。
実際にどの資料で住所のつながりを証明できるかは、登記簿、住民票、住所履歴、取得時期、過去の登録状況などを確認しなければ判断できません。
その判断は、司法書士が行うべき専門的な確認事項です。
ただし、不動産会社様が早い段階で「この案件は外国籍の売主様で、登記簿上の住所と現在住所が違うかもしれない」と気づいていただけると、決済トラブルを防ぎやすくなります。
不動産会社様には、専門的な判断をお願いしたいのではありません。
早めに司法書士へつなぐきっかけを作っていただきたいのです。
その一手が、売主様、買主様、金融機関、関係者全員の負担軽減につながります。
売買契約前後に確認しておきたい実務チェックリスト
外国籍の売主様が関係する不動産取引では、売買契約の前後で次のような点を確認しておくと安心です。
- 売主様が外国籍の方であるか
- 登記簿上の氏名・住所と現在の本人確認書類の表示が一致しているか
- 登記簿上の住所が古い住所のままになっていないか
- 不動産の取得日が平成24年7月9日以前か
- 平成24年7月9日以前の住所履歴が関係しそうか
- 住民票や住民票の除票で住所のつながりが確認できるか
- 外国人登録原票の開示請求が必要になる可能性があるか
- 決済予定日までに必要書類がそろう見込みがあるか
- 司法書士が早い段階で資料確認できているか
このチェックリストは、外国籍の売主様がいる取引を避けるためのものではありません。
むしろ、外国籍の売主様が関係する取引を安全に、円滑に進めるためのものです。
早めに確認できれば、必要な資料を準備し、決済日程を無理なく組むことができます。
決済日を決める前に司法書士へ相談するメリット
不動産会社様にとって、決済日は非常に重要です。
売主様、買主様、金融機関、司法書士、仲介担当者の予定を合わせ、残代金の支払い、鍵の引渡し、登記申請を同日に行う必要があります。
だからこそ、決済日を決める前に、登記上の注意点を確認しておくことには大きな意味があります。
司法書士が早めに確認すれば、住所変更登記の必要性、必要書類、取得にかかる期間、決済日程への影響を見通すことができます。
特に、外国人登録原票が必要になる可能性がある場合には、30日程度の余裕を見て動く必要があります。
この確認を決済直前に行うと、日程変更のリスクが高まります。
一方で、契約前後の早い段階で確認できれば、売主様に資料取得を依頼し、買主様や金融機関にも必要に応じて説明することができます。
不動産取引では、早めの確認が、そのまま安心につながります。
よくある誤解
外国籍の売主様だと必ず外国人登録原票が必要ですか
必ず必要というわけではありません。
登記簿上の住所と現在の住所が一致している場合や、住民票等で住所のつながりが確認できる場合には、外国人登録原票が不要なこともあります。
必要かどうかは、個別の資料を確認して判断します。
在留カードがあれば住所変更登記はできますか
在留カードは本人確認資料として重要ですが、登記簿上の住所から現在の住所までの変更履歴を証明する資料とは役割が異なります。
住所のつながりを証明するためには、住民票や外国人登録原票など、住所履歴を確認できる資料が必要になることがあります。
外国人登録原票は市役所で取得できますか
現在、外国人登録原票は市区町村ではなく、出入国在留管理庁で保管されています。
必要な場合には、出入国在留管理庁に対して開示請求を行う必要があります。
開示請求をすればすぐに届きますか
すぐに届くとは限りません。
開示決定まで30日程度を見込む必要があり、実際に手元へ届くまでの郵送期間なども考慮する必要があります。
そのため、決済日が近い場合には注意が必要です。
司法書士法人JOネットワークの対応
司法書士法人JOネットワークでは、不動産売買決済において、売主様の登記簿上の住所と現在の住所の確認を重視しています。
特に、外国籍の売主様が関係する取引では、取得時期、住所履歴、住民票で確認できる範囲、外国人登録原票の要否について、早めに確認することをおすすめしています。
決済直前に必要書類が不足していることが判明すると、売主様、買主様、不動産会社様、金融機関様の全員に影響が出ます。
そのため、当法人では、決済日が確定する前の段階で、できるだけ資料を確認し、必要な場合には早めに追加資料をご案内するよう努めています。
不動産会社様におかれましては、外国籍の売主様が関係する案件で、登記簿上の住所と現在住所が異なる可能性がある場合、早い段階で司法書士へご相談ください。
専門的な判断は司法書士が行いますので、まずは「この案件は確認が必要かもしれない」と共有していただくだけで十分です。
まとめ
外国籍の売主様が関係する不動産取引では、登記簿上の住所と現在の住所が異なる場合に、住所変更登記が必要になることがあります。
特に、平成24年7月9日以前に不動産を取得している外国籍の所有者については、現在の住民票だけでは過去の住所履歴を確認できず、外国人登録原票が必要になる場合があります。
外国人登録原票は、現在、出入国在留管理庁で保管されており、必要な場合には開示請求を行います。
開示請求から開示までは、30日程度を見込む必要があります。
そのため、売買契約が成立してから、あるいは決済日を決めてから確認すると、必要書類が決済日に間に合わない可能性があります。
これは、外国籍の売主様が悪いという話でも、不動産会社様に専門的な判断を求める話でもありません。
制度上、資料取得に時間がかかる場合があるため、早めに確認しておくことが大切だという話です。
不動産会社様には、外国籍の売主様がいる案件、特に登記簿上の住所と現在住所が異なる可能性がある案件について、決済日を決める前に司法書士へご相談いただくことをおすすめします。
早めに確認できれば、外国人登録原票の要否、住所変更登記の必要性、決済日程への影響を整理できます。
結果として、売主様、買主様、不動産会社様、金融機関様の全員が、安心して決済に臨むことができます。
外国籍の売主様が関係する不動産売買では、契約成立後すぐに、そして決済日を確定する前に、登記上の住所確認を行いましょう。
司法書士法人JOネットワークでは、不動産売買決済に関する登記書類の事前確認、外国籍の売主様の住所変更登記、外国人登録原票が必要となる可能性の確認について、ご相談を承っています。
少しでも不安がある場合は、決済直前ではなく、早めの段階でご相談ください。

