遺贈・配偶者居住権

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 遺贈とは、遺言によって無償で財産を与える行為をいいます。遺贈には、受遺者(財産を受ける者)に特定の財産を与える特定遺贈と遺産の全部又は一部の分数的割合を与える包括遺贈があります(民法964条)。
 また、遺言者は受遺者に対して、単純な遺贈をすることができるだけでなく、受遺者に一定の給付をなすべき義務を負担させることもできます(負担付遺贈)。この負担の内容について特に制限はありませんが、受遺者は遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負うものとされています(同1002条)。
 ところで相続人に相続を承認するか放棄するかを選択する自由があるように受遺者にも遺贈を承認するか放棄するかの自由がありますが、その方法は特定遺贈と包括遺贈で次のように異なります。

 受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄をすることができます(同986条)。相続のときのように熟慮期間内という制限はありませんし、家庭裁判所に対する申述などの特別な方式もありません。特定遺贈の放棄は、遺贈義務者(通常は遺言者の相続人又は相続財産管理人等)に対する意思表示によって行います。

 包括受遺者は、遺産の全部又は一部を包括的に承継することから相続人に類似し、民法では相続人と同一の権利義務を有するとしています(同990条)。したがって、熟慮期間内に単純承認、限定承認又は放棄を行うことになります。

 配偶者居住権とは、夫婦の一方(被相続人)が所有する建物に居住していた場合で、一定の要件を充たすときに、被相続人が亡くなった後も、残された配偶者が賃料の負担なくその建物に住み続けることができる権利をいいます。
 平成30年に民法等の一部が改正され、令和2年4月1日から施行されています。残された配偶者は、被相続人の遺言や、相続人間の話合い(遺産分割協議)で配偶者居住権を取得することができます(同1028条1項)。
 配偶者居住権は、第三者に譲渡したり、所有者に無断で建物を賃貸することはできませんが、建物の所有権を取得するよりも低い価格で居住権を確保することができるので、遺言や、相続人間の遺産分割協議の際に他の遺産(預貯金等)をより多く取得することが可能となります。
 配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間です(同1030条)。ただし、遺言・審判等において別段の定めがあるときは、その定めになります。
 配偶者居住権は、登記をしないと第三者に対抗することはできません。このことから当該建物の所有者は、居住権を取得した配偶者に対して登記手続きをする義務を負います(同1031条1項2項)。
 ところで、遺言で配偶者居住権を設定する場合に注意しなければならないことは、配偶者は常に法定相続人となりますが、「特定財産承継遺言」(同1014条2項)によって「配偶者居住権を相続させる。」と記載すべきではなく、「遺贈する。」と記載することが重要です。その理由は、残された配偶者が当該居住権を必要としない場合、相続による「放棄」と特定遺贈における「放棄」の違いにあると考えられます(相続による放棄は、配偶者居住権だけを放棄することはできず、相続財産の全てを放棄しなければならないからです)。
 遺言での具体的な記載方法は、次の記載例を参考にしてください。

(例)

 『 第1条 遺言者は、遺言者の所有する次の建物について、配偶者居住権を、遺言者の配偶者〇〇〇〇(生年月日)に遺贈する。

(建物の表示)

所  在 東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇〇番地〇

家屋番号 〇〇番〇

種  類 居宅

構  造 鉄筋コンクリート陸屋根2階建

床 面 積 1階 〇〇.〇〇㎡

2階 〇〇.〇〇㎡             』

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