
相続の説明で、相続による権利・義務の承継は、被相続人の死亡によって一定の身分関係にある者が当然かつ包括的に承継すると説明しました。しかし、承継される財産が積極(プラス)財産よりも消極(マイナス)財産の方が大きい場合や仮に積極財産が大きい場合でも、相続人はそれらの承継を強制される訳ではなく、承継するか否か、承継する場合でもどのように承継するかということを選択することができます。これが、相続の承認・放棄という制度です(民法915条~940条)。
相続人は次の3つの選択肢の中から判断することになります。
- 単純承認・・・被相続人の権利・義務を無限定・無条件に承継する。
- 限定承認・・・被相続人から承継する積極財産の限度で被相続人の債務や遺贈を弁済する相続形態
- 相続放棄・・・被相続人の一切の相続財産の承継を拒否する。
相続の承認・放棄を、被相続人が亡くなる前に行うことはできません。また。被相続人が亡くなったことを知った時(相続の開始があったことを知った時)から3か月以内(熟慮期間)にしなければなりません(同915条)。もっとも相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときや熟慮期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかった場合には単純承認したものとみなされます(同921条)。
限定承認をする場合は、熟慮期間内に相続財産の目録を作成して、家庭裁判所に申述します(同924条)。また相続放棄をする場合は、熟慮期間内に家庭裁判所にその旨申述します(同938条)。